
※本内容は2026年9月現在の政府公表資料等に基づいています。今後の法案審議や制度設計により内容が変更となる可能性にご留意願います。
こんにちは。
みそら税理士法人の上山です。
「給付付き税額控除」が閣議決定されました。税額控除なのに給付されるとは一体どういうことなのでしょうか?
今回は、現在政府で導入に向けて検討が進められている「給付付き税額控除」について記載させていただきます。
目次
【概要】
政府は、2027年4月1日から2年間、現在8%となっている軽減税率対象の飲食料品について、消費税率を1%に引き下げる方針を示しています。
この飲食料品1%と、現在政府が導入を進めている「給付付き税額控除」には、実は重要なつながりがあります。
政府は、飲食料品の消費税率を1%まで引き下げるだけでなく、その1%相当分の範囲内で、所得に応じた給付を行う方針を示しています。
食料品の消費税率を 8%から1%へ引き下げたうえで、さらに支払った1%分の税負担に対して給付(補填)を行う ことで、実質的な負担ゼロを目指す仕組みです。
そして、この制度はあくまで2029年度から予定されている本格的な所得連動型給付制度への「つなぎ」と位置付けられています。
【給付付き税額控除とは?】
簡単にいうと、「税金を減らす仕組み」と「現金を給付する仕組み」を組み合わせた制度
です。
通常の税額控除の場合、計算された所得税などから一定額を差し引くことができます。
例えば、所得税額 10万円、税額控除 7万円であれば、10万円-7万円=3万円となり、支払う所得税は3万円になります。
では、所得税が3万円しかない人について、10万円の税額控除が認められた場合はどうでしょうか。
通常の税額控除であれば、税金を0円にすることはできますが、控除しきれなかった7万円については基本的にそれ以上の効果はありません。
一方、給付付き税額控除では、例えば制度を単純化して考えると、
所得税額 3万円、税額控除額 10万円の場合、所得税3万円を0円にしたうえで、控除しきれなかった7万円を給付するという仕組みが考えられます。
つまり、税金を多く払っている人だけでなく、所得が低く、もともとの税負担が少ない人にも支援を届けやすいという特徴があります。
なお、上記の金額は制度を説明するための一例であり、実際の控除額や給付額が10万円と決まっているわけではありません。
【なぜ給付付き税額控除を導入するのか?】
政府が特に着目しているのが、中低所得の現役で働く世代の負担です。
政府の基本方針では、
・中低所得の現役勤労者の負担を軽減すること
・所得に応じて手取りが増える仕組みにすること
・「年収の壁」などによる働き控えを緩和すること
などが目的として掲げられています。
現在の所得税にある基礎控除や扶養控除などの所得控除(税率をかける前の所得を小さくする仕組み)は、適用される税率が高い高所得者ほど減税効果が大きくなりやすい特徴があります。これに対し、税額から直接差し引き、引けない分は給付する仕組みにすることで、税負担の小さい中低所得者にも手厚い支援を届ける狙いがあります。
【「年収の壁」とはどのように関係しますか?】
現在は、一定の収入を超えることで税金や社会保険料の負担が増え、場合によっては収入が増えた割に手取りが増えにくくなることがあります。
そのため、「これ以上働くと社会保険料が増えるから勤務時間を減らそう」といった働き控えが起こることがあります。
給付付き税額控除では、所得が増えるにつれて給付額を調整するなど、収入が増えれば手取りもできるだけ滑らかに増えていく制度を目指して議論されています。
政府も「年収の壁」などによる働き控えの緩和と就労促進を制度導入の目的の一つとしています。
【いつから始まるのでしょうか?】
政府の2026年8月5日の基本方針では、2029年度から「所得に連動したきめ細かな給付」を導入する方針が示されています。
また、それまでの「つなぎ」として、2027年度には飲食料品に係る消費税負担への対応と組み合わせた形で、「所得に連動したきめ細かな給付」を先行導入する方針も示されています。
したがって、給付付き税額控除については、
2027年度 → 一部を先行導入
2029年度 → 本格的な制度へ
という流れになるものと想定されます。
【誰がいくらもらえるのでしょうか?】
2026年9月現在、具体的な給付額や細かな所得基準など、制度のすべてが確定しているわけではありません。
現在は国と地方の間でも、制度をどのように運営するのか、給付事務をどのように行うのかなどについて協議が進められています。
今後、所得要件や給付額、申請方法、税務手続との関係などが具体化していくものと考えられます。
【会社にも影響する?】
給付付き税額控除は個人の税金や給付に関する制度ですが、企業にとっても無関係とはいえません。
制度設計によっては、
・年末調整
・給与計算
・所得情報の確認
など、会社の給与事務に影響が出る可能性もあります。
特に「年収の壁」を意識して勤務時間を調整しているパート・アルバイトの方が多い会社では、制度変更によって働き方が変わる可能性もあります。
【まとめ】
給付付き税額控除を一言で表すと、
「税金を減らすだけでは十分な支援を受けられない人にも、給付という形で支援を届ける仕組み」です。
政府は、中低所得の現役勤労者の負担軽減や、「年収の壁」による働き控えの緩和などを目的として制度導入を進めています。
一方で、具体的な所得基準や給付額、手続方法などについては、まだ今後決められる部分があります。
給付付き税額控除は、今後の所得税や社会保障制度を考えるうえで重要な制度になる可能性があります。
当事務所でも、今後の制度改正の動向を確認しながら、具体的な内容が明らかになり次第、随時お知らせしてまいります。
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