非上場株式の相続税評価が変わる?|経営支援に強い【みそら税理士法人】 非上場株式の相続税評価が変わる? | みそら税理士法人

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公開:2026年8月28日
更新:2026年8月28日

非上場株式の相続税評価が変わる?


こんにちは。みそら税理士法人の原田です。

今回は60年ぶりの大見直しがある「非上場株式の相続税評価」について解説します。

 

60年ぶりの大見直しで何が変わるのか、やさしく解説

会社を経営している方にとって、自社の株式は相続対策・事業承継における重要な財産です。

その非上場株式の相続税・贈与税評価について、国税庁は現在、評価方法を大きく見直す検討を進めています。

まだ正式決定ではありませんが、これまでの「会社の規模によって評価方法を変える仕組み」から、会社の資産と収益力をより直接的に見る仕組みへ移行する可能性があります。

2026年8月20日に国税庁の有識者会議で示された案をもとに、ポイントを分かりやすく整理します。

 

そもそも非上場株式とは?

上場会社の株式であれば、株式市場に日々の株価があります。たとえば、東京証券取引所に上場している会社なら、「今日の株価」が誰でも確認できます。

一方、中小企業の多くは株式を上場していません。このような会社の株式は市場価格がないため、相続や贈与があったときには、国税庁の定めるルールに沿って「税金を計算するための株価」を算定します。

この評価額が高いほど、相続税や贈与税の負担は大きくなります。そのため、自社株評価は事業承継において非常に重要です。

 

現行制度の問題点

現行制度では、会社の規模や業種、資産の内容などに応じて、主に次のような方法を使い分けています。

 

主な方式概要
類似業種比準価額方式同じ業種の上場会社の株価を参考にして評価する方法
純資産価額方式会社の資産・負債を相続税評価額ベースで計算して評価する方法
配当還元方式実際の配当額を基に評価する方法。少数株主などに適用される

 

このうち、類似業種比準価額方式は、規模の大きい会社に使われることが多く、純資産価額方式より低い評価額となる場合があります。

ただし、「非上場の中小企業なのに、上場会社の株価を基準にすることが本当に適切なのか」「会社規模や株主構成を調整することで評価額を大きく下げられることがある」といった問題が、以前から指摘されてきました。

国税庁も、評価方式の違いによる不公平や、評価額圧縮を目的とした取引への対応を見直しの背景として挙げています。

 

新しい評価方法のイメージ

国税庁が検討している中心的な考え方は、会社の「資産」と「稼ぐ力」の両方を見る方法です。

イメージとしては、次のようになります。

難しく見えますが、簡単に言えば次のような考え方です。

  • 会社にどれだけの財産があるか
  • その会社が継続的にどれだけ利益を生み出せるか
  • 単に資産を保有しているだけでなく、資産を上回ってどれだけ稼いでいるか

を組み合わせて株価を計算しよう、というものです。

この方法は「残余利益方式」と呼ばれます。帳簿上の純資産を土台にし、通常期待される利益を超える部分、いわゆる超過収益を株価に反映させる考え方です。

国税庁資料では、過去数年の利益を使い、その利益の価値を現在価値に換算する方向性が示されています。

 

不動産を持つ会社はどうなる?

今回の見直しで特に注目されるのが、不動産を多く持つ会社です。

現行の純資産価額方式では、土地や建物を相続税評価額などで評価するため、昔から保有している土地に大きな含み益がある会社では、株価が高くなりやすい傾向があります。

一方、検討されている残余利益方式では、資産について原則として帳簿価額ベースの純資産を使う方向が示されています。

事業で使っている土地などを、相続税評価額まで引き直さない考え方です。

たとえば、30年前に1億円で購入した事業用土地が、現在は相続税評価額で5億円相当だったとします。

  • 現行の純資産価額方式では、土地の評価が株価に大きく反映されやすい
  • 新方式では、帳簿価額1億円を基礎にする可能性がある
  • ただし、会社が高い収益力を持っていれば、その収益力が株価に上乗せされる

という違いが考えられます。

つまり、「不動産をたくさん持っているから必ず株価が下がる」「利益が多いから必ず株価が上がる」と単純には言えません。

資産構成と利益水準の組み合わせによって、影響は会社ごとに異なります。

 

これまでの株価対策はどうなる?

今回の見直しには、評価額を意図的に下げるためのスキームを抑える狙いもあります。

見直しの対象になり得るものとして、次のような論点が挙げられています。

  • 会社規模を変えて有利な評価方式を選べる構造
  • 一時的に利益を減らして株価を下げる取引
  • 多額の役員報酬や役員退職金による利益調整
  • 親会社から子会社への資産・利益移転
  • 少数株主向けの配当還元方式を利用した評価引下げ
  • 株主構成や議決権割合の調整

国税庁は、単年度の利益ではなく、数年分の利益を平均する方法や、一時的・例外的な損益を除く「通常の利益」を使う方法を検討しています。

また、完全支配関係にある子会社を含めてグループ全体の価値を把握する方向性も示されています。

そのため、単年度だけ赤字にする、特定の時期に多額の費用を計上する、といった対応だけでは株価を下げにくくなる可能性があります。

 

いつから変わるのか?

現時点では、正式な改正時期は決まっていません。

2026年8月時点では、国税庁の有識者会議で方向性が示された段階です。具体的な計算式、適用対象となる会社、過去何年分の利益を使うか、利益の調整方法、経過措置、実際の適用開始日などは、今後詰められることになります。

したがって、「すでに新制度になった」「今からは類似業種比準価額方式が使えない」といった理解は誤りです。

相続・贈与が現行制度の下で行われる限り、原則として現行の財産評価基本通達に基づいて評価します。

 

経営者が今から確認したいこと

制度改正が正式に決まる前でも、自社の状況を整理しておくことは有益です。

  • 直近数年の利益がどの程度安定しているか
  • 一時的な役員退職金・不動産売却益・保険解約益などがあるか
  • 帳簿価額と時価に大きな差がある不動産や有価証券を保有しているか
  • 子会社・関連会社を含めたグループ構造があるか
  • 株主構成、議決権割合、種類株式の内容はどうなっているか
  • 現行方式による株価と、新方式を仮定した株価にどの程度差が出そうか
  • 贈与、相続、事業承継、M&A、持株会社化などの予定があるか

特に、今後数年以内に自社株贈与や事業承継を予定している会社は、現行方式だけでなく、将来の残余利益方式を仮定した場合の影響も試算しておくとよいでしょう。

 

まとめ

今回の見直しは、単なる計算方法の変更ではありません。非上場株式の評価を、会社規模や上場会社との比較から、実際の資産と収益力をより重視する評価へ移す可能性があります。

一方で、現段階ではあくまで検討案です。早急に対策を実行するよりも、まずは現行評価額を正確に把握し、自社の資産・利益・グループ構造を整理したうえで、正式な改正内容を見極めることが重要です。

 

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