こんにちは。みそら税理士法人の廣岡です。
「書面添付制度」という言葉を聞いたことはありますか?まだ一般的に広く知られている制度ではありませんが、相続や起業を検討している方にとって、この制度について知っておくことは非常に重要です。
書面添付制度とは、税理士が作成した申告書に、その内容の信頼性を裏付ける書面を添付して提出できる制度です。この制度は、税理士法30条と33条の2という2つの異なる規定で成り立っています。この2つの違いを理解することで、書面添付制度の本当の価値が見えてきます。
目次
書面添付制度とは?税理士法30条・33条の2の違いを解説

税理士法30条「税務代理権限証書」の役割
税理士法30条に規定されているのは、「税務代理権限証書」です。これは、税理士が納税者の代理人として税務に関する申告や提出を行う権限があることを示す書面です。この書面を提出することで、税務調査などの際に、税務署からの連絡を納税者本人に代わって税理士が受けることができるようになります。
税理士法33条の2「書面添付」の役割
一方、税理士法33条の2に規定されているのが、いわゆる「書面添付」です。これは、申告書を作成した税理士が、計算事項や整理した事項、納税者から受けた相談内容などを記載した書面を添付するものです。この書面は、税理士がどのように申告内容を調査・判断したかを税務署に説明する、いわば「保証書」のような役割を果たします。
書面添付制度の「意味」と「目的」
書面添付制度の最も重要な「意味」は、申告内容の透明性と信頼性を高めることです。税理士が申告書を作成する過程を明確にすることで、税務署は申告内容をより深く理解でき、不要な税務調査を減らすことができます。この制度は、納税者、税理士、税務署の三者が協力して適正な申告を行うことを「目的」としています。
書面添付は本当に効果がある?最新の税務調査状況から考える
「書面添付は本当に効果的なのか?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。この疑問に答えるため、最新の税務調査の状況を見てみましょう。
相続税の税務調査の現状
国税庁が公表した最新の統計によると、相続税の実地調査件数は減少傾向にある一方で、1件あたりの追徴税額は増加しています。特に、相続税申告における実地調査の約8割で申告漏れ等が指摘されており、追加で税金を支払うことになる可能性が非常に高いのが現実です。
(参照:国税庁「令和5事務年度における相続税の調査等の状況」)
書面添付制度による税務調査の「省略」
しかし、書面添付制度を利用すると、このような税務調査が「省略」される可能性が大幅に高まります。書面添付がされている場合、税務署はまず納税者本人ではなく、書面を添付した税理士に対して、書面の内容について意見を述べる機会を与えます(これを「意見聴取」と言います)。
この「意見聴取」の段階で税務署の疑問点が解消されれば、実地調査が不要と判断されるのです。これは、納税者にとって精神的・時間的な負担を軽減する重要な「対策」となります。
書面添付制度のメリットとデメリット
書面添付制度には、納税者と税理士の双方にメリットとデメリットが存在します。
納税者側の大きなメリット
- 税務調査の確率が低くなる: 税理士のお墨付きがあるため、税務調査の対象となる可能性が大幅に減少します。
- 事前通知と意見聴取: 税務調査の前に税理士が税務署と直接やりとりするため、納税者が直接対応する必要がなくなります。
- 信頼性の向上: 申告書の内容がより信頼性の高いものとして扱われ、金融機関などに対しても有利に働く可能性があります。
- 延滞税や加算税の軽減: 万が一、申告漏れが指摘された場合でも、その原因が書面に記載された事項に起因するものであれば、延滞税や加算税の一部が免除される規定があります。
税理士側の責任とメリット・デメリット
- メリット: 納税者からの信頼度が高まり、税務署との円滑なコミュニケーションが可能になるなど、専門家としての責任を果たすことができます。
- デメリット: 書面作成には追加の時間と事務作業が必要になります。また、万が一、虚偽や不実の内容を記載した場合、税理士は懲戒処分の対象となる可能性があるため、作成する税理士にはより一層の責任が求められます。
「書面添付は意味ない」は誤解?その理由と正しい対策
インターネット上などで「書面添付は意味ない」という意見を目にすることがありますが、その理由は何でしょうか。
- 制度自体の普及率が低い:納税者側に制度を知らない人が多い
- 導入している税理士が少ない:書面添付を実施していない事務所がある
- 費用や手間がかかる:書面の作成に別途料金が発生する場合がある
しかし、これらのデメリットを上回るメリットがあるのが書面添付制度です。特に、高額な財産を相続税の申告をする場合や、事業を法人化する際の法人税申告など、将来的に税務調査の可能性が高い状況においては、書面添付は非常に有効な対策です。
書面添付制度を最大限に活用するために
申告書に書面を添付することは、納税者の負担を軽減し、申告内容の適正性を確保するための有効な手段です。
大切なのは、書面添付制度を積極的に実施している税理士に依頼することです。税理士を選ぶ際には、単に費用や場所だけでなく、書面添付制度への取り組み状況も確認するべき重要な事項です。
みそら税理士法人では、書面添付制度を積極的に活用し、お客様が安心して申告を終えられるようサポートいたします。税務に関するご相談やご依頼がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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