令和6年4月から開始!「相続登記等の義務化」と「不動産関連制度の改正」について|大阪の税理士【みそら税理士法人】

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2022年11月18日

令和6年4月から開始!「相続登記等の義務化」と「不動産関連制度の改正」について


みそら
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最近、民法の規定が大きく改正されましたが、その中でも注目すべきなのが「相続登記等の義務化」と「不動産関連制度の改正」です。前者についてはこれまで任意だった相続登記等が義務とされ、後者については不明土地の管理や土地の相隣関係に関するものとなります。

いずれも、普段の生活に直結する改正というだけでなく、相続登記等の義務違反については過料の対象ともなるため、法律の施行後に「知らなかった!」ではすまされない問題となります。とくに「親から相続した不動産がある」という方は、注意か必要です。

この記事では、これらの改正の内容や押さえておくべきポイントについて解説いたします

2つの民法改正事項とは?

令和3年4月21日に民法に関する2つの大きな改正が行われ、同月28日公布されました。その一つが「相続等・住所等変更登記の申請義務」であり、もう一つが「土地・建物に関する規定の見直し」です。

また、これとあわせて「土地を手放すための制度の創設」も行われています。いずれも直接、我々の生活に影響する大きな改正ですが、とくにかかわりが深いのが「相続登記や住所変更登記申請の義務化」です。

これまで相続登記の申請は任意とされてきましたが、それが原因となって数世代にわたって相続登記が行われず、それが権利関係を複雑にするする原因となっていました。また、これ伴い所有者不明土地も増大し、土地・建物の管理や隣地との相隣関係を解決するうえでの支障となっていました。そのため、政府はこれらの問題の一元的な解決を図るため、関係する民法の規定を見直すこととなったのが、今回の改正の大きな理由です。

※ 「平成28年度地籍調査における土地所有者等に関する調査」より参照

今後の法改正のスケジュール

相続に関する土地関連の法整備が急務となる中、令和3年4月21日「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)が成立しました(令和3年4月28日公布)。所有者不明土地については、これまでも一部対策が行われてきましたが、今後については以下のスケジュールにもとづく法令の実施が予定されています。

「所有者不明土地」について

「所有者不明土地」の定義

「所有者不明土地」とは、相続登記がされないこと等により、以下のいずれかの状態となっている土地をいいます。

● 不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地

● 所有者が判明しても、その所在が不明で連絡がつかない土地

一般財団法人国土計画協会の所有者不明土地問題研究会によると、2016年度地籍調査を実施した1,130地区(563市区町村)の約62万筆における所有者不明土地(農地や林地含む)の割合は20.1%となり、この数値にもとづく広さは約410万haと九州本島の土地面積(約367万ha)を上回っています。

この所有者不明土地増加の原因は、相続時における所有権移転の未登記が66.7%と全体の2/3を占め、もし、今後、所有者不明土地の対策を取らない場合には、2040年には所有者不明土地は約720万haに達し、北海道本島の土地面積(約780万ha)に近づくものと見込まれています。

所在射不明との増加により発生する問題

今後、所有者不明土地が増加した場合、次のような問題が生じることが予測されます。

所在者不明土地については、これまでもその対策が求められてきましたが、実効性が乏しくあまり具体的な効果を上げてきませんでした。しかし、今回の諸制度が機能することにより、今後は徐々に問題が解消されていくことが期待されています。

相続登記・住所変更登記手続きの義務化について

ここでは、改正法のうち、相続登記・住所変更登記手続きの改正や義務化について説明します。

相続登記の申請の義務化(令和6年4月1日施行予定)

これまでは、相続が発生しても積極的に相続登記がされてきませんでしたが、その理由として「相続登記の申請が任意であった」、「不動産の評価が低い場合には、登記手続きの費用や手間の方が過大となってしまい登記の申請をする意味がなかった」、「申請をしなくても不利益を被ることが少なかった」などがありました。しかし、相続登記がされない場合には、時間の経過とともに相続人が増えてしまい、必要となったときに手続きができないといった弊害が生じたことから、今回の法改正により相続登記の申請が義務化されました。

今後、相続登記については、以下のルールにより行われることとなります。

相続登記全般に関するルール

① 基本的なルール

相続(遺言を含む)によって不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

② 遺産分割成立時のルール

遺産分割の話し合いがまとまった場合には、不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記を申請しなければなりません。しかし、話し合いが難しいような場合には、今回、新たに作られた「相続人申告登記」の手続きをすることで義務を果たすことができます。

③ 義務に違反した場合

上記①・②ともに、正当な理由がなく義務に違反した場合は、10 万円以下の過料が適用されることがあります。※ ただし、履行期間経過後でも催告に応じて登記申請がされれば、裁判所に過料通知はしないものとする予定となっています。

なお、上記の正当な理由としては、次のようなものが予定されています。

※数次相続:相続手続きをする前に、その相続人につき新たな相続が発生すること

遺産分割したときや分割協議がまとまらないときは?

相続人申告登記の申出後に、遺産分割協議によって不動産の所有権を取得したときは、遺産分割成立の日から 3 年以内に、その内容を踏まえた相続登記の申請を行う義務が生じます。ただし、相続人申告登記の申出後に、遺産分割が成立しない場合は、それ以上の登記申請は義務付けられません。

また、注意しなければならないのが、この相続登記の申請義務は、改正法の施行後に発生した相続のみならず、施行日(令和6年4月1日)前に相続が発生していたケースについても適用されるということです。そのため、施行日前に相続が発生しているケースについては、改正法の施行日(令和6年4月1日)とそれぞれの要件を充足した日のいずれか遅い日から法定の期間(3年間)がスタートすることとなります。

相続人申告登記の創設(令和6年4月1日施行予定)

不動産を所有している方が亡くなった場合、その相続人の間で遺産分割の話し合いがまとまるまでは、全ての相続人が法律で決められた持分(法定相続分)の割合で不動産を共有した状態になります。この共有状態を反映した相続登記を申請しようとする場合、法定相続人の範囲や法定相続分の割合を確定しなければならないため、すべての相続人を把握するための資料(戸籍謄本など)の収集には多くの時間や労力が必要となっていました。

そこで、今回の法改正により簡易に相続登記の申請義務を履行できるようにする仕組みが新たに設けられました。それが「相続人申告登記」です。

相続人申告登記は、それぞれの相続人が単独で行うことができ、提出する書面も少なくて済むため、簡単な手続きで相続登記の申請義務を履行することができます。

相続人申告登記とは?

相続人申告登記とは、以下の2点を申請義務の履行期間内(3年以内)に登記官に申し出ることで、相続登記の申請義務を履行したものとみなす制度です。

※ ただし、登記簿に氏名・住所が記録された相続人の申請義務のみ履行したこととなります。

なお、この申し出の際には、申出をする相続人自身が被相続人(所有権の登記名義人)の相続人であることが分かる当該相続人の戸籍謄本を提出することで足ります。したがって、法定相続人の範囲や法定相続分の割合の確定が不要であり、その分資料収集の手間が軽減されます。また、一人の相続人が相続人の分を代理して申し出ることもできます。

この申し出を受けた登記官は、所要の審査をした上で、申出をした相続人の氏名・住所等を職権で登記に付記します。ただし、この制度による表示では相続によって権利を取得したことまでは公示されず、従来の相続登記とはまったく異なる制度であるため、その後に相続による所有権の移転などを行う場合には、通常の相続登記を行う必要があります。

住所等の変更登記の申請の義務化について(令和8年4月までに施行)

本来、登記名義人の氏名や住所に変更を生じた場合には、その旨の変更登記(登記名義人の変更登記)をすることとなっています。しかし、これまでは、これらの変更登記の申請は任意とされていたため、なかなかその登記が行われてきませんでした。

そこで、今回の改正では、相続登記の申請の義務化と同様に、住所等の変更登記の申請が義務となりました。今後、住所移転があった場合の変更登記については、以下のルールにより行われることとなります。

住所等の変更登記の申請義務についてのルール

なお、住所等の変更登記の申請義務は、相続登記の場合と同様に、改正法の施行後に発生した住所等の変更のみならず、施行日前から住所等の変更登記がされていない不動産についても適用されます。この場合も、

・改正法の施行日(具体的には政令で決定)

・それぞれの要件を充足した日

のいずれか遅い日から2年以内に住所等の変更登記の申請をしなければなりません。

住所変更の職権登記制度について

今回の改正においては、住所変更登記等の申請の義務化と併せて、職権による登記制度も予定されています

自然人・法人のいずれの場合も、登記官の職権による変更登記が行われた場合には、本人の登記申請義務は履行済みとなります。

所有不動産記録証明制度(令和8年4月までに施行)

これまでは複数の不動産を所有している方が亡くなった場合、そのすべての不動産を網羅して把握する手段がなかったため、相続登記から漏れて手続きがされない不動産が生じるということがありました。そのため、今回の法改正では、相続人の手続きの負担を軽減し、登記もれを防止するため、新たに「所有不動産記録証明制度」が創設されました。

「所有不動産記録証明制度」とは、特定の被相続人が所有権の登記名義人として記録されている不動産(そのような不動産がない場合には、その旨)を一覧的にリスト化し、証明書として発行する制度です。

ただし、プライバシー等に配慮して、この証明書の交付を請求できるのは、

・自らが所有権の登記名義人として記録されている人

・相続人その他の一般承継人

に限られます。

今後はこの制度により、被相続人の所有していた不動産の一覧が証明書として発行されるため、相続登記が必要なすべての不動産を把握しやすくなります。

所有権の登記名義人の死亡情報についての符号の表示について(令和8年4月までに施行)

これまでは、不動産の所有権の登記名義人が死亡しても、相続登記等がされない限り、不動産の登記記録から所有者の死亡を確認することはできませんでした。このような状況を解消するため、今回の法改正では、登記官が他の公的機関(住基ネットなど)から死亡情報を取得した場合、その死亡の事実を職権で不動産登記に符号で表示できることとなりました。

そのため、今後においては、登記を見ればその不動産の所有権の登記名義人の死亡の事実を確認することが可能となります。

外国に居住する所有権の登記名義人の国内連絡先の登記制度

これまで所有権の登記名義人が外国居住者である場合については、住基ネット等との連携によっても住所等の変更情報を取得することができませんでしたが、今回の改正では、所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先を登記事項とすることとなりました。

形骸化した登記の抹消手続の簡略化

これまで形骸化した買戻しの権利や地上権、担保権等の登記が放置されていても、これらを抹消することは困難でしたが、今回の改正により一定条件のもと、抹消することができるようになりました。

相続土地国庫帰属制度の創設

新たに「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(相続土地国庫帰属法)」(令和3年法律第 25 号)が公布され、土地の所有権を取得した相続人が、今後その土地を利用する予定がない場合、法務大臣の承認により、土地を手放して国庫に帰属させることが可能となりました。

申請できる人

本制度の申請をすることができるのは、原則、相続や遺贈によって土地の所有権を取得した方となります。制度の開始前に土地を相続した方でも申請することができますが、売買等によって任意に土地を単独で取得した方や法人は対象になりません。

なお、土地が共有の場合には、相続や遺贈によって持分を取得した相続人を含む共有者全員で申請する必要があります。

申請の対象となる土地

以下のような通常の管理又は処分をするに当たって過大な費用や労力が必要となる土地については、本制度の対象外となります。

審査・負担金の納付について

本制度の申請をした時には、法務局による書面審査や実地調査が行われます。本制度の申請をするには、申請時に審査手数料を納付するほか、国庫への帰属について承認を受けた場合には、負担金(10 年分の土地管理費相当額)を納付する必要があります。

具体的な金額や算定方法は、今後、政令で定められる予定です。

土地・建物に特化した財産管理制度の創設について

これまで、土地や建物の所有者が行方不明の場合には不在者財産管理人を、また、所有者が死亡して相続人が明らかでない場合には相続財産管理人を選任するという方法が行われてきました。しかし、従来の財産管理制度は、条件や制約が多く、使いにくいものであったため、今回の改正により、所有者が不明の土地・建物、所有者による管理が適切にされていない土地・建物について新たに財産管理制度が創設されました。

所有者不明土地・建物の管理制度について(令和5年4 月1日施行予定)

所有者不明土地・建物や、管理不全状態にある土地・建物について、裁判所の関与のもと、管理人の選任ができるようになりました。

民法のその他の改正について

上記の他に、以下のような民法等の改正が予定されています。

共有制度の見直し(令和5年4月1日施行)

共有状態にある不動産について、所在等が不明な共有者がいる場合には、その利用に関する共有者間の意思決定を することができなかったり、処分できずに公共事業や民間取引を阻害したりしているといった問題が生じていました。そのため、今回の法改正では、共有物に変更を加える行為であっても、形状又は効用の著しい変更を伴わない変更行為(軽微変更)については、共有者の持分の過半数で決定することができるものとなりました。

また、所在等が不明な共有者がいる場合には、他の共有者は、地方裁判所に申し立て、その決定を得て、所在等が不明な共有者の持分を取得したり、その持分を含めて不動産全体を第三者に譲渡するなどの変更行為ができるようになりました。

長期間経過後の遺産分割の新たなルールの導入(令和5年4月1日施行)

相続が発生してから遺産分割がされないまま長期間放置されると、相続が繰り返されて多数の相続人による遺産共有状態となる結果、遺産の管理・処分が困難になります。また、長期間が経過するうちに寄与分などの相続分を算定する証拠等がなくなってしまい、遺産分割が難しくなるといった問題も生じていました。

今回の改正法では、これを解消するため、被相続人の死亡から 10 年を経過した後にする遺産分割は、原則として、具体的相続分ではなく、法定相続分(又は指定相続分)によることとするというルールが新たに設けられました。

なお、新たなルールは改正法の施行日前に開始した相続についても適用され、この場合には施行時から5年間の猶予期間が設けられますが、5年の猶予期間後には具体的相続分により分割できる利益が失われるため注意が必要です。

相隣関係の見直し(令和5年4月1日施行)

これまでは、隣地の所有者やその所在を調査しても分からない場合には、隣地の所有者から隣地の利用や枝の切取り等に必要となる同意を得ることができませんでした。しかし、今回の改正により、これらの問題解決のため、相隣関係に関するルールのさまざまな見直しが行われました。

ただし、隣地使用者から使用を拒否されている場合などには無断で隣地を使用することができないため、このような場合には判決による許可を得る必要があります。

まとめ

今回の民法改正では、「相続登記・住所移転登記の義務化」と、「不動産関連制度の改正」が大きな目玉となっていますが、その中には共有制度の見直しや遺産分割に関するルール、相隣関係の見直しなど、我々の生活に関係の深い改正がいくつも含まれています。中でも、相続登記・住所移転登記の義務については、正当な理由なくこれをしなかった場合には過料の対象となるため、それぞれで定められた期限内に手続きを行う必要があります。

なお、今回の改正は数が多く、実施される時期も制度ごとに異なるため、見落としがないよう注意してください。

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