医科・歯科医院における税務調査について|大阪の税理士【みそら税理士法人】

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税務/会計
2021年2月4日

医科・歯科医院における税務調査について


みそら税理士法人田内でございます。

 

今回は医科・歯科医院の税務調査について述べたいと思います。

医院・歯科医院での税務調査では大きく分けて以下の3つが論点になると考えます。

① 医業収入、② 人件費、③ 経費

医業収入に関する調査

窓口負担金

医業収入の調査においては、収入計上漏れの確認が中心となります。

社会保険支払基金及び国保連合会からの入金は計上漏れになることはないと思います。

 

ただし、患者窓口負担はいかがでしょうか?

職員の窓口負担金を免除している医院は多くありますが、税務調査では問題になることはありません。

就業規則(具体的には、福利厚生規程)に従って処理しているのであれば、「福利厚生費」になることで、収入及び費用が両建てとなるからです。

窓口負担金全額を受領し(医業収入)、その後現金で診療費補助を支給する(福利厚生費)という記帳を行います。

しかしながら、当該処理は療養担当規則に違反します。

療養担当規則5条において「患者一部負担金の支払を受けるものとする」と定められており、窓口負担金免除を認めていないからです。

 

(一部負担金等の受領)
第五条 保険医療機関は、被保険者又は被保険者であつた者については法第七十四条の規定による一部負担金、法第八十五条に規定する食事療養標準負担額(同条第二項の規定により算定した費用の額が標準負担額に満たないときは、当該費用の額とする。以下単に「食事療養標準負担額」という。)、法第八十五条の二に規定する生活療養標準負担額(同条第二項の規定により算定した費用の額が生活療養標準負担額に満たないときは、当該費用の額とする。以下単に「生活療養標準負担額」という。)又は法第八十六条の規定による療養(法第六十三条第二項第一号に規定する食事療養(以下「食事療養」という。)及び同項第二号に規定する生活療養(以下「生活療養」という。)を除く。)についての費用の額に法第七十四条第一項各号に掲げる場合の区分に応じ、同項各号に定める割合を乗じて得た額(食事療養を行つた場合においては食事療養標準負担額を加えた額とし、生活療養を行つた場合においては生活療養標準負担額を加えた額とする。)の支払を、被扶養者については法第七十六条第二項、第八十五条第二項、第八十五条の二第二項又は第八十六条第二項第一号の費用の額の算定の例により算定された費用の額から法第百十条の規定による家族療養費として支給される額に相当する額を控除した額の支払を受けるものとする。

 

このため、立ち入り検査や個別指導において当該事実が発覚すると指導の対象となります。

したがって、一度職員に窓口負担金を支払後、給与計算時に返金することをお勧めします。

「診療費補助」などの支給項目で返金し、雇用保険料及び源泉所得税の対象となるようにしてください。

よく差引支給額に診療補助費を上乗せしているケースを見ますが誤りです。

 

クレジットカード

クレジットカード決済の計上漏れや歯科医院での撤去冠売却収入の計上漏れがよく見られます。

クレジットカードは一般的に15日締め月末入金、月末締め翌15日入金かと思います。

決算月の翌15日入金を未収金として計上することを忘れないようにしてください。

 

撤去冠

税務署は、産業廃棄物処理会社に税務調査時に、反面資料とてして撤去冠の買い取り先歯科医院を把握しています。

撤去冠を売却時には必ず雑収入を計上し、医療法人決算においては勘定科目内訳書に記載しなければなりません。

 

自由診療

インプラントや矯正治療といった高額な自由診療は、患者は確定申告において医療費控除を行います。

当該患者が医療費として計上した金額が、歯科医院側では収入として計上されていなければなりません。

窓口集計表と予約表が手書き管理されている医院では、予約の変更が反映されておらず「予約があるのに窓口収入がない」ケースがないようにしましょう。

 

人件費に関する調査

架空人件費

人物の特定はできても、就業している実態が無い人は架空人件費として否認されます。

調査時には必ずタイムカードと給与台帳の照合を行い、下駄箱、ロッカーの名札があるかなどの確認を行います。

配偶者や親族に対して給料を支払っている場合、職員に「最近いつ頃出勤されてましたか?」と聴かれる場合があります。

労働者名簿の作成、職務内容の取り決め、タイムカードの打刻、理事会の議事録作成を徹底しましょう。

 

また、スタッフが医療法人内の複数施設で兼務している場合、施設基準の人員を満たしているか必ず確認をしてください。

人員が足りない場合、報酬を減額あるいは請求自体ができなくなるなど経営に大きなインパクトを与えます。

介護事業所の話になりますが、立ち入り検査で介護スタッフを複数兼務させていたことで人員基準を満たしていないことが発覚し、数億円の介護報酬の返還を命じられたケースがあります。

 

経費に関する調査

MS法人との取引

MS法人との取引がある場合、経費に関する調査はMS法人との取引が中心になります。

① 契約書を作る

② 金額の算定根拠を用意する

③ MS法人側で収入に対する原価(費用)がある

上記3点を徹底することが重要と考えます。

 

MS法人に年間数千万もの収入がありながら、職員が配偶者1名のみという場合、ペーパーカンパニーと認定されても仕方ないでしょう。

受付・診療報酬請求事務をMS法人に委託するのであれば、職員をMS法人に転籍させるなど実態を作る必要があります。

金額の算定根拠、特に家賃は医療法人設立認可申請や定款変更認可申請などで都道府県から近傍類似比較などの資料の提示を求められることがあります。

 

MS法人との取引以外

MS法人との取引以外で調査官がよく確認するのは「交際費」、「福利厚生費」、「消耗品」などに個人的支出が含まれていないかどうかです。

支払先が明確でも支出した内容が医院の運営に必要と認められるものでなければ経費になりません。

購入明細がわかる領収書や請求書を保管していれば、個人的支出でないことは証明できます。

しかし、領収書の但し書きに「お品代」と書いているものが多い場合には当然内容の確認をされますし、反面調査が行われると考えてください。

ネット通販でクレジットカード購入した場合、カード明細には「amazon.co.jp」や「楽天市場」という記載しかないため、購入履歴を確認されることになります。

 

次に現物の確認です。

パソコン、テレビ、冷蔵庫、自動車など個人的にも使用する可能性が高いものは特に確認されます。

固定資産台帳に記載されているものは当然ですが、消耗品と処理されたものも現物確認されることがありますので注意してください。

固定資産台帳にある医療機器、電カル、レセコンの他、消耗品で処理したノートパソコン、ipad、wifiルーター、プリンターなどは実際に税務調査において設置場所を聞かれたことがあります。

以上が税務調査における代表的な論点となります。

 

税務調査の目的は「適切で公平な課税」です。

合理的な説明とそれを証明する資料を準備しておけば必要以上に恐れることはありません。

 

 

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