
こんにちは。みそら税理士法人の上山です!
実は、この11月に「通勤手当の税金に関するルール」がひっそりと、しかし大きく変わりました。 今回の改正ポイントと、今年の年末調整で絶対に忘れてはいけない実務について、分かりやすく解説します。
- 2025年11月の改正で、車・バイク通勤の非課税限度額が引き上げられました。
- 2025年4月1日までさかのぼって適用されます。
- 今年の年末調整で「精算(払い戻し)」が必要です。
目次
1. 通勤手当の「非課税」とは?
前提として、給与として受け取るお金には通常「所得税」が課税されます。しかし、通勤手当については「会社に行くための必要なお金」という性質があるため、一定額までは税金がかかりません。これが通勤手当の「非課税」です。
この非課税枠を超えた分については、給与と同じ扱いとなり、所得税・住民税の課税対象となります。
2. 何が変わったの?(11年ぶりの引き上げ!)
ガソリン価格の高騰などを受けて、自動車や自転車などで通勤している人への「通勤手当の非課税枠」が引き上げられました。
簡単に言うと、「給料のうち、税金がかからない枠が増えた(=手取りが少し増える)」という嬉しいニュースです。
▼ 新しい限度額の一例(片道距離) 特に距離が長いほど、引き上げ額が大きくなっています。
- 10km以上 15km未満: 7,100円 → 7,300円(+200円)
- 25km以上 35km未満: 18,700円 → 19,700円(+1,000円)
- 55km以上: 31,600円 → 38,700円(+7,100円)
※電車やバス通勤(定期券)の上限(月15万円)に変更はありません。
区分 | 課税されない金額 | 差額 | |
改正前 | 改正後 | ||
2km未満 | 全額課税 | 全額課税 | ― |
2km以上10km未満 | 4,200円 | 4,200円 | 0円 |
10km以上15km未満 | 7,100円 | 7,300円 | 200円 |
15km以上25km未満 | 12,900円 | 13,500円 | 600円 |
25km以上35km未満 | 18,700円 | 19,700円 | 1,000円 |
35km以上45km未満 | 24,400円 | 25,900円 | 1,500円 |
45km以上55km未満 | 28,000円 | 32,300円 | 4,300円 |
55km以上 | 31,600円 | 38,700円 | 7,100円 |
3. ここが重要!「令和7年4月までさかのぼる」ってどういうこと?
今回の改正で一番ややこしいのが、適用開始日です。 ルールが決まったのは2025年11月ですが、適用は「2025年(令和7年)4月1日以降に支払われた分」からとなります。
つまり、「4月〜11月の間、本来は非課税(税金ゼロ)でよかったのに、古いルールのままで税金を引いてしまっていた」という状態が発生しています。
4. 会社がやるべき「年末調整」での対応
払いすぎていた税金を、従業員の方に返す必要があります。具体的な手順は以下の通りです。
- 対象者の洗い出し: マイカー・自転車通勤者で、改正前の限度額を超えて通勤手当をもらっていた人(通勤距離が片道10km以上の方)をピックアップします。
- 差額の計算: 4月支給分から現在までの「課税されていた金額」と「新ルールなら非課税だった金額」の差額を計算します。
- 年末調整で精算: 年末調整の計算の中で、払いすぎていた所得税を還付(マイナス)処理します。
まとめ
今回の改正は、従業員の方にとっては「手取りが増える」メリットがありますが、経理担当者様にとっては「計算のやり直し」という手間が発生する案件でもあります。
給与計算ソフトのアップデート状況を確認しながら、令和7年度の年末調整の際は、ご注意下さい。
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