こんにちは。みそら税理士法人 松原でございます。
相続税の申告に強い税理士は数少ないですが、その中でも書面添付制度に対応できる税理士はさらに限られ
ます。
相続税の申告における書面添付制度の活用には、どのようなメリットがあるのか、ご説明いたします。
書面添付制度とは
書面添付制度とは「書面添付制度(税理士法第33条の2)」と「意見聴取制度(同法第35条)」の総称で
す。本制度により、税理士が申告書に一定の書面を添付することで、税務当局が納税者へ税務調査を行うよ
うな場合であっても、先に税理士へ意見聴取を行うようになります。
「書面添付」
書面添付とは税理士のみに認められた制度であり、税理士または税理士法人が、税務申告書とは別に『①ど
のような項目について』、『②どの資料を』、『③どの程度確認して』、『④どのように検討・判断したか
』を記載した書面を添付することをいいます。納税者から税務代理を依頼された場合や、作成した申告書に
関してその内容に間違いがないと認める場合には、税理士または税理士法人はその申告書に「税理士法第33
条の2第1項に規定する添付書面」を添付することができます。
「意見聴取」
意見聴取とは、税務当局が「書面添付制度」を活用した相続人に税務調査を行う場合に、担当した税理士・
税理士法人へ意見を述べる機会を与える制度です。この意見聴取は大きく以下の3種類に分けられていま
す。
・事前通知前に行う意見聴取
・更正処分前に行う意見聴取
・不服申立てに関わる調査の意見聴取
このうち「事前通知前に行う意見聴取」では、申告内容・添付内容などに関する疑問点を解明するために、
税務当局が税理士や税理士法人に対して質問等を行うことになります。なお、このときは税理士のみが対応
するため、納税者が同席する必要はありません。
そして、意見聴取によって実際に税務調査が省略された場合には、税務当局より「調査省略通知」が交付さ
れることになっています。
書面添付制度のイメージ
相続税の申告において、書面添付制度を活用するメリット
税務調査の省略の期待
相続税の申告は、法人税や所得税の申告と比べると税務調査が行われる確率が25%前後と非常に高くなっ
ており、4件に1件くらいの割合で税務調査が実際に行われています。
いったん税務調査が入ると80%以上、5件に4件の方には追徴課税が課されています。
書面添付制度を利用した場合には、税務調査に選ばれる割合は約6%程度まで劇的に下がります。
加算税の免除
書面添付制度のメリットとして、加算税の一部免除があります。
通常の税務調査で申告内容に誤りが見つかり修正申告となった場合には、罰金として『過少申告加算税』や
『重加算税』といった加算税と『延滞税』が発生します。
税務調査前に自分から間違えたことを申告した場合は、「自主申告」扱いになり罰金である加算税は免除さ
れますが、税務調査後では自主申告扱いとはなりません。
しかし、書面添付制度を利用し税理士への意見聴取段階で指摘された誤りについては、税務署と税理士が合
意した場合は、自主申告扱いで修正申告できるので、加算税が免除されることとなります。
ただし、加算税が免除されても、延滞税(税金の支払いが遅れた利息)は免除されません。
申告書作成の経緯の明確化
相続税の申告書の作成を税理士に依頼する際、相続人のうち、どなたかが相続人代表となって税理士と申告
書作成のためのやりとりをするのが一般的です。
書面添付制度を活用した場合、適正な申告書の作成のため、税理士は相続人代表の方に、深度あるヒアリン
グや資料の提供・確認をお願いすることとなります。
この申告書作成の経緯は、添付書面に記載されることとなるため、他の相続人の方も、どのようにして相続
税の申告書が作成されたのか理解しやすくなります。
まとめ
(出典:平成29事務年度 国税庁実績評価書)
上記の表のとおり、相続税に関しては、書面の添付割合が年々増加してきています。
相続税は、他の税目と比べて事案ごとの個別事情が複雑となる場合が多く、申告書だけでは税務当局も計算
根拠等が適正であるのか、机上での判断が困難となります。
書面添付制度を活用し、根拠資料とともに税務当局の確認したいポイントとなる申告書作成の経緯を明確に
提示することは、非常に有効な手段と言うことができます。
弊社では、複数の相続税申告・実務経験の豊富な税理士と資産課税部門(相続税、贈与税、財産評価等を担
当)出身の国税OBの専門スタッフが、相続税の適正な申告書の作成とあわせて、効果的な書面添付制度の
ご活用のお手伝いをさせていただいています。
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